普通の予防接種とインフルエンザの予防接種との違い

 インフルエンザの予防接種を希望する方がいるのですが、他の予防接種と効果も考 え方も違います。以下に箇条書きしてみます。

1. 普通の予防接種は接種したらその病気にかからない。インフルエンザの予防接種は接種してもかかる
 普通の予防接種は少なくとも90%以上の有効率があります。インフルエンザの予防接種は「有効」とのデーターでも20~60%の有効率です。この程度の有効率では“予防接種をしたから病気にならなかった”“予防接種をしてないから病気になった”という実感はありません。また、重症のインフルエンザ脳炎・脳症は発生のしくみが異なりますので、予防接種では防ぐことはできないとされています。

2. 普通の予防接種は子供にする。インフルエンザの予防接種は老人にする。
  普通、感染症は抵抗力がない子供に多いので予防接種も子供にします。インフルエンザ の予防接種も以前は子供全員にしていました。しかし、いくら全員にしてもインフルエンザの流行は減少しなかったのです。副作用のことも重なり、インフルエンザ予防接種の接種率は80%以上から20%へ、そして1%以下にまで低下しましたが、インフルエンザの流行は特に増加もせず続いています。ただ、老人施設でインフルエンザが 流行した場合、死亡・重症者率が、予防接種をしている方がやや少ないとの報告があり、厚労省は65才以上の老人には予防接種をすすめています。

3. 普通の予防接種は健康な者にする。 インフルエンザの予防接種は病気を持っている者にする
 予防接種の効果がほとんどない、しかし全く無効とも言えない場合、予防接種をして得られる利益が、予想される危険性(副作用)を十分上回っていることが必要です。悪性疾患、重症の喘息、染色体異常症など、“かぜをひいても死ぬ目に会う・入院する”ことが予想される病気を持っている方は予防接種をしておいてもいいでしょう。

4. 普通の予防接種は接種量が0.5ccと一定である。 インフルエンザの予防接種は年令によって接種量が違っている。
 予防接種は免疫の刺激ですから、体重6kgの乳児でも、80kgのお父さんでもすべて同じ量です。ところがインフルエンザは年令によって注射の量が違います。薬は体重によって服用する量が違うので、体重によって注射の量が変わるのはまだある程度理解できるのですが、年令によって違うのは解りません。誰が何を根拠に決めたのかは予防接種の専門家でも“わからない”とのことです。

5. 普通の予防接種は抵抗力(抗体)が約10年から一生持続する。インフルエンザの予防接種は4ヶ月しかもたない。
 インフルエンザの予防接種でできた抵抗力(抗体)は1年後には40%以下に下がります。もともとの有効率が低いうえにウイルスの型も変わりますので、次の年まで効果はもちません。有効な期間も3~4カ月間と考え、流行の1~2カ月前に接種するのですが・・・。

6. 普通の予防接種は無料。 インフルエンザの予防接種は有料。
  インフルエンザの予防接種は任意で受ける予防接種ですから、行政からの補助は出ません。各医療機関が値段を決めています。ただし、65才以上の者は接種料の補助があります。

7. 普通の予防接種は副作用(副反応)に対して特別に補償がある。インフルエンザの予防接種はわずかな補償しかない。
 予防接種法で受けるべきとされた予防接種を受け、副作用が起こった場合、特別な救済が決められています。インフルエンザ予防接種は任意(=しなくてもよい)ですから、一般の薬の副作用被害として扱われ、重大な副作用に対する補償がかなり少なくなります。

 
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