漢方薬一口メモ

注意 これら漢方薬も、医師の処方に基づいて正しく処方された量 を使用してください。

 田村こどもクリニックではいわゆる西洋薬と漢方薬の両方を使っています。ここではその一部をご紹介しましょう。

かぜ
 風邪の原因にはウイルスと細菌があり、抗生剤はウイルスには効きませんが、漢方薬はどちらにも有効です。風邪の引き始めには葛根湯(カッコントウ)、高熱の出始めには桂麻各半湯(ケイマカクハントウ)、熱が続く時は柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)、体力が落ちてきていたら補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、のどが痛かったら小柴胡湯加枯梗石膏(ショウサイコトウカキキョウセッコウ)、鼻水が多かったら小青竜湯(ショウセイリュウトウ)等を目安に処方します。

下痢・腹痛
 食養生が基本ですが、漢方薬は小建中湯(ショウケンチュウトウ)を使用 します。小建中湯(ショウケンチュウトウ)は、おなかの調子を整える薬ですから、慢性の便秘にも使います。又、痩せて体力のない虚弱体質の子、 時々おなかが痛くなる神経質なタイプの子、食の細い子供などにも有効  です。カゼに伴う下痢の場合は胃腸にも良い柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)を処方しています。嘔吐には五苓散(ゴレイサン)座薬(院内製剤)がよく効きます。

夜泣き
 あきらかな原因のない夜泣きは、子供自身にはなんの害もないので、周囲(家族)がそのために困っていたら甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)を寝る前に飲ませます。甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)は小麦、ナツメ、甘草というシンプルな組み合わせの漢方薬ですがこれで夜泣きはぴたりと止まります。

喘息
 これは西洋薬の方が、作用としては強力です。しかし強力な薬は、過ぎると副作用も強く出てきます。麻杏甘石湯、五虎湯(マキョウカンセキトウ、ゴコトウ)など、去痰作用のあるものを主に処方します。鼻水を伴う場合は小青竜湯(ショウセイリュウトウ)、長期服用が必要な場合は、柴朴湯(サイボクトウ)を処方しています。喘息発作を繰り返し、体力が落ちてきているときは補中益気湯(ホチュウエッキトウ)を少し長く飲んでみましょう。

熱をよく出す
 保育園や幼稚園に入って暫くは病気をたくさんもらってきます。病気になったり治ったりしながら子供は抵抗力をつけていくのですが、月に2~3回以上熱を出す場合は柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)を1日2回朝晩、3ヶ月程度飲ませてみてください。中耳炎を繰り返す時にも柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)を長期服用すると治りやすいものです。熱性けいれんを繰り返す場合はこれを1年間程度服用し続けてみる方法もあります。

じんましん
 子供のじんましんは身体の調子が悪いときに出るものがほとんどです。西洋薬では抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤を用います。漢方薬も色んなものが使われていますが、当院では小柴胡湯(ショウサイコトウ)を処方しています。特に長引くじんましんにはよく効きます。私が漢方薬を使い始めたのも小柴胡湯(ショウサイコトウ)が最初です。


 漢方薬に対する偏見

長く飲まないと効かない? 

漢方薬でも1~2回で効果を現す薬もあれば、3ヶ月を目安にしている薬もあります。慢性の病気などでは稀に1~2年服用することもありますが、ただ漠然と投与するわけではありません。たとえば体質改善目的に投与する場合は3ヶ月服用しても変化がなければ無効と考えていますし、症状が改善されたなら一旦中止してみて、続けて服用する必要があるか否かを判断します。

漢方薬は苦い?
 もちろん苦い薬もありますが、甘い薬もあります。西洋薬は子供向けに「イチゴ味」や「オレンジ味」にしていますので、それに慣れている子供には多少飲みにくいこともありますが、飲む気さえあれば、飲ます気さえあれば必ず飲めます。当院では本当に苦い薬は子供には使っていません。

漢方薬は何にでも効く?
 悪性疾患や、手術の必要な病気には漢方薬は補助的にしか使用しません。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息など、西洋薬で苦労する病気は、漢方薬でも特効薬というものはありません。地道に治すほか無いのです。

漢方薬は高い?
 病院で処方している漢方薬は、そんなに高いものではありません。医療保険も効きますから2週間分もらっても安いものです。漢方薬は高いほど効果 があるというのは迷信です。