クリニックだよりNO.38

小児科医の運動

 "子供の健康の為"には、病気になった子をみているだけでは不十分です。治療が受けやすいように、できるだけ病気にならないように、そしてより健康に過ごせるようにという社会的な環境整備も大切です。今小児科医の会で取り粗んでいる主な連動を紹介しますので、家族の方々も御協力をよろし<お願い致します。

1.小児医療費の補助

 子供は少なくとも3年間(2才児まで)医債費は無料というのは、今の日本では"常識"となっています。国の医療行政もこれを前提に医療費を決めています。ですから高知県以外では"小児医療費の補助の拡大"と言えば少なくとも6才まで、あるいは15才までの無料化を指しています。高知県でも市民運動のある市町村、あるいは常識的な議員のいる市町村では3年間から6年間の小児医療費が無料になっていますが、高知市や南国市では未だに2年間しか無料になっていません。小児科医の会としては少なくとも3年間無料にするよう、知事に何度か頼みましたが"その気は全くありません"とつれなく言われ統けています。老人医療費が1割負担となり、"年寄りが病院にかかれなくなる"との声がありますが、子供は以前も今も3割負担です。"小子化をなんとかしなくてはいけない"といいながら、選挙権を持たない子供と、投票に行かない20~30代の両親の希望は無視されています。国会議員の動きとしては、15才までの医療費自己負担を1割にしようという動きがあります。これなら老人も子供も1割負担で納得できるし、患者家族の方も負担が3分の1(3割から1割)になるので非常に助かると言えるのですが。

2.予防接種の広域化

 病院は市町村に無関係に患者が選べます。公費での乳児健診や妊婦健診は、高知県内ならどの病院でも無料で受けることができます。ところが予防接種は、原則として住んでいる市町村でしか受けることができません。これは実に不便です。医師会や厚生省は"かかりつけ医"を推奨しています。"かかりつけ医"が自分の住んでいる市町村にあれば問題はないのですが、小さい町村には小児科医がいない場合が多く、知らない医師に予防接穂をしてもらうことになります。その子の普段の状態をよく知らない医師にまかす親御さんも不安でしょうが、知らない子に注射する医師も不安なのです。大きな市なら小児科もいくつかあり、子供の状態が良い時を選んで注射ができるのですが、小さい町村では月に1回とか年に2回しか予防接種の日がありません。一度その日を逃してしまうと、なかなか注射ができません。次の予防接種の日を待っている間も"かかりつけ医"では予防接種をいくらでもしているのに、町村が違えばしてもらえないのです。行政は予防接種の接種率を上げようと、あまり必要では無い予防接種まで受けさせようと必死なのですが、他の市町村で受けてもいいとは言ってくれません。数年前、新聞に"市町村の枠を越えて予防接種を受けさせて"という投書をしたお母さんがいましたが、県や市町村には無視されました。少なくとも高知県ならどの小児科でも予防接種を受けれるようにして欲しいものです。

3.子供に禁煙環境を

 私はタバコを吸いません。しかし医師にもタバコを吸う方がいます。でも、タバコを吸う医師でも子供にはタバコを吸わせてはいけないと言っています。酒は、飲んだ人が全員"アル中"になるのではないのですが、タバコは吸う者全員が"ニコチン中毒"になります。1日1箱(20本)吸う人は1時間に1本のニコチンを補給しなければならない体になってしまっているのです。そこで提案です。タバコの自動販売機をやめて対面売りにしましょう。これで中学生や高校生はタバコを買いにくくなります。そしてタバコの値段をぐっと上げましょう。"ガキの小遣い"では買えない価段にするのです。おとなになってからの喫煙はまだやめやすいのですが、法律で禁止されている"未成年者の喫煙"で"ニコチン中毒者"となるとなかなか禁煙できません。