おたふくかぜ

 正式には流行性耳下腺炎、英語ではムンプスと言います。はれた顔がお多福に似ているので、通称おたふくかぜと言います。流行しない耳下腺炎もあり、何回もする時は、正確にはそのうちの一回だけが本当のおたふくかぜで、後は反復性耳下腺炎と言います。

症状 耳の下にある耳下腺や、あごの下の顎下線がはれて痛くなります。普通両側がはれますが、片方だけのこともあります。熱が3~4日出ます。お腹が痛くなることもあります。ただし、0才児では感染しても病気にはならずに抵抗力をつくる、不顕性感染がほとんどです。おとながかかると症状が強く出ます。

原因 ムンプスという名のウイルスの感染で、伝染します。潜伏期間は2~3週間です。

検査 血液と尿のアミラーゼが上昇します。白血球は正常、CRPや血沈も正常かやや悪化するくらいです。今までにおたふくかぜにかかったことがあるかどうかを調べるには血液検査で抗体価を調べます。

合併症 おたふくかぜは全身の病気で、合併症が多いのが特徴です。
1. 髄膜炎:高熱が続き、嘔吐、頭痛があります。普通の髄膜炎は必ず入院しますが、おたふくかぜに伴うものは程度が軽く、原因がはっきりしているので、まず外来で様子を見ます。ぐったりしたり脱水になるようなら点滴・入院します。

2. 急性膵炎:膵臓にも炎症をおこし、腹痛を訴えます。その為もあり血液中・尿中のアミラーゼが上昇します。脂肪分の少ない、消化の良い食事にしてください。

3. 睾丸炎、卵巣炎:まれにしかおこりません。成人男では精子がなくなると言われますが、病気の時だけなので男性不妊の原因にはなりません。

4. 聴力障害:片方の耳が聞こえなくなることがまれにおこります。耳鼻科で治療しますが効果はほとんど望めず、発症すれば後遺症として残ります。片方なので生活には支障ないのですが、逆に難聴に気が付かない場合もあります。電話の声を左右で同じように聞くかどうかためしてみましょう。

治療 安静が第一です。ムンプスウイルスにきく薬はありませんが、免疫力を強める目的で私は柴胡桂枝湯を使っています。痛くて食事ができない、眠れないようなら痛み止めを使うこともあります。発熱が続く時には細菌感染予防の為、抗生剤を服用することもあります。食事はすっぱいものをやめ、あまりかまなくてもよいものにしてあげて下さい。

予防 予防注射があります。1才以上でしてもかまいませんが、不顕性感染があるので、私は3才を過ぎてからにしています。まれですが副反応で髄膜炎をおこすことがあります。おたふくかぜにかかったかどうか不明の時は、血液検査で抗体価(抵抗力)を調べ、なければ予防注射をします。2度手間がいやなら検査せずに予防注射をしてもかまいません。成人でも同じですが、妊娠中は予防注射はしません。

兄弟がおたふくかぜにかかったら予防注射はもう遅いというこになりますので、流行がない時にしておきます。
学校・保育園は痛みがなくなり、はれがひくまで休みます。1週間から10日間 かかります。