クリニックだよりNO.52 



 離乳食で悩んでおられるお母さんが多いようです。保健所で指導されたり、おばあちゃんに言われたりでお母さんが悩んでしまうのは無理ありません。
 なぜ離乳食が必要かというと、赤ちゃんの体が大きくなってきて、成長に必要なカロリーが母乳や人工乳からだけでは足らなくなってくるからです。
 赤ちゃんの発育のためには体重1kgについて1日約100キロカロリー必要とされていますので、体重が7kgになると1日必要なカロリーは700キロカロリーとなります。母乳や人工乳は100ccあたり70キロカロリーですから、1日1000cc以上の母乳を飲まなくてはなりません。乳児期の赤ちゃんが飲める最大量はだいたいこのくらいが限度でこれ以上では、水分過剰になってしまいます。
 そこで、それ以上のカロリーは固形食から取るようにしましょうというのが「離乳食」を始める理由です。


本当は育児書にあるから、回りに言われるから無理して飲ませていませんか?市販されている乳児期の果汁の箱にも"2ヶ月~"と書かれているのがありますね。赤ちゃんが飲まないのは赤ちゃんの体が必要としていないという事です。少量、楽しんで飲ますのはかまいませんが、無理して飲ます必要はありません。
   甘い味(高い糖分)は赤ちゃんの体にもよくありません。まだまだ、母乳だけで十分です。


湯冷ましは全く必要ありません。以前の人工乳は牛乳と成分が似かよっており、たんぱく質やミネラルが多すぎて赤ちゃんにはとても濃すぎたのです。そこで、それを薄めましょうという目的と、湯上りがいいだろうという大人の感覚が手伝ったものです。また、湯冷ましの始まりはかなり昔の話なのですが上水道の整備が不十分で、ほとんどの家庭では井戸水を使っていたため、赤ちゃんが下痢をしたら大変ということで一度沸騰させて消毒して、冷まして飲ませていました。古い習慣が続いているようです。



母乳の飲ませすぎではなく、逆に離乳を急ぎすぎるとその様に考えてしまいます。例えば7~8ヶ月の赤ちゃんなら早い方は離乳食を2回食べているかもしれないし、ゆっくりの赤ちゃんは母乳を7~8回飲んで離乳食をさっぱり欲しがらないかもしれません。
 母乳の回数が多いから離乳食を食べないのではなく、離乳食がまだあまり欲しくない時期に無理に食べさせようとするから嫌がって食べたくないのです。「悪い事」ではありません。1ヶ月や2ヶ月離乳食を早く始めたからといって、それで赤ちゃんの発達が早まるとか赤ちゃんが得する事はありません。どんな赤ちゃんも、成長につれて三度三度の食事をきちんと食べるようになるのです。




・・・・・・・・参考文献・・・・・・・
            日本母乳の会 離乳食


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