予防接種について・・・ 最新版  2020.9   ~田村こどもクリニック~

 予防接種には法律で推奨されていて無料で受けることができるものと、任意・ 有料で受けることができるものとがあります。ここ数年で法的には変わってきていますが、 医学的な面からできるだけ正確な説明をしてみます。

四種混合(ジブテリア・破傷風・百日咳・ポリオ)  二種混合(ジフテリア、破傷風)
 以前三種混合だったものがポリオが加わり四種混合になりました。かつて肢体不自由児の多くがポリオでしたが、予防接種で劇的に減少し、 今日本にこの病気はなくなりました。世界にもほとんどなくなりましたが、戦争地帯他にはまだあります。百日咳は日本では年間数千人がかかっています。
1才以下で百日咳になると苦しくなります。破傷風は病気になってしまったら治療法はありません。予防接種が一番です。
予防接種を生後3ヶ月になったらすぐに受けて欲しいと思います。最初に1ヶ月毎に3回しますが、きちんとできていれば2回でもかまいません。 3回したら1年後にもう1回します。効果は10年でなくなりますので、小学校6年で2種混合として追加します。

BCG
 BCGは0才児の重症の結核(結核性髄膜炎・栗粒結核)をある程度予防しますが、結核全般を予防することはできません。
ですから先進国ではBCGをしていません。日本でもこの0才の重症の結核の発生は、最近はありません。するのだったら早くということで、 2005年4月から生後5ヶ月までにすることになりましたが、重症の副反応(結核性骨髄炎)の発症が増加したこともあり、実施期間が11ヵ月までになりました。
結核予防会は全員にするよりも結核の感染が疑われる子供(ハイリスク児)だけにしてはどうかと提案しています。以上より当院ではBCGをしないことに決めました。 BCGをしなかったら、結核が疑われたときツベルクリン反応で判定がしやすい=治療が早く開始できるという利得があります。

MR(麻疹=はしか・風疹)
 麻疹にかかると今でも半数近くは点滴や入院が必要ですし、死ぬこともまれにあるので、小児科医が一番してほしい予防接種です。
「1才になったらすぐに予防接種をしましょう!」とキャンペーンを続けた結果、麻疹の発生数は年に数万人からかなり減少しましたが、まだゼロではありません。 風疹の最近の発生数は年間数千人です。子供がかかっても軽症ですが、大人がかかると入院することもあります。妊娠初期に風疹になると胎児に影響するので、 予防接種の一番の目的はこれを防ぐ為ですので、妊娠希望の夫婦も予防接種をして抵抗力を上げておいた方が良いと言われています。
予防接種の効果は10年しかもたないので、同じく長くもたない麻疹と一緒に予防接種を2回することになっています。

日本脳炎
  子供でこれにかかるのは年に1人いるかいないかですし、人から人にうつることもありません。
予防接種の副反応の為、5年間中止状態でしたが、改良された予防接種で再開されました。日本脳炎の発生は7~8月のみで、予防接種の効果も5年しかもたないので、 するのなら5~6月にした方が得です。

おたふくかぜ(ムンプス)
  これは、髄膜炎・急性膵炎・睾丸炎・難聴など合併症が多く、特に難聴は回復しません。1才過ぎて、麻疹や風疹の予防接種もすんだら、 受けておいた方がいいでしょう。
世界中のほとんどの国では、麻疹・風疹といっしょに(MMR)2回していますので、確実な予防をするなら2回します。(有料)

水痘(みずぼうそう)
  みずぼうそうには重い合併症がほとんどありません。重大な病気をしていて抵抗力が低下している子がかかると死ぬ目にあいます。
1~2才児は2014年10月から無料になりましたが、予防接種の効果が少し悪いこともあり2回実施します。


B型肝炎
  この予防接種は世界では四種混合と一緒に(=5種混合)、0才から実施しています。 家族にB型肝炎・HB抗原+(プラス)の方がいたら必ずした方がよいでしょう。
今は母親がウイルスを持っている場合(母乳からうつる)のみ無料ですが、 2016年から無料になる予定です(ただし無料対象年令が未定です)。血液と性交でうつりますが、小さい時程接種効果が良いので子供時代にしておいた方が良いでしょう。
1ヵ月置いて2回して、6ヵ月以上空けて3回目をします。特に血液に触る仕事(検査技師、看護師、医者、理美容師、保育士、養護教員、介護士など)をする方はこの予防接種をしておきます。(有料)

インフルエンザ
  かつてこの予防接種をしてきましたが、1994年から中止になりました。最近また任意でされていますが、 毎年予防接種をしていてもかかる方はかかりますので、効果はほとんどないと考えています。流行状況も予防接種率に無関係です。
65才以上の方、風邪を引いても死ぬ目にあう重症の病気を持っている方はしてみてもよいでしょう。(有料)

インフルエンザ菌b型(ヒブワクチン)
  インフルエンザ菌b型は主に0~1才の髄膜炎を起こす細菌で、細菌性髄膜炎の原因の約半分を占めていました。
この細菌による髄膜炎は年間数百人いましたが、ヒブワクチンを実施してからかなり減少してきています。 通常は四種混合・肺炎球菌ワクチンと3本一緒に同時接種をしています。(インフルエンザウイルスとは全く別物ですので、間違わないように”ヒブ”と呼んでいます)

肺炎球菌ワクチン(13価・プレベナー)
  肺炎球菌も髄膜炎の原因菌のひとつです。さらに肺炎球菌は髄膜炎以外の重症の感染症も起こしますので、これらの予防にもなります。
肺炎球菌のタイプはいくつもあり、小児用は子どもにかかりやすい13つのタイプを対象としたワクチンです。という事はこれ1本で13種類の予防接種をしたことになり、 副反応で熱を出す事が時々みられます。その為、生後2ヵ月からできる事になっていますが、私は3ヵ月から始めるのが安全と考えています。(老人用の肺炎球菌ワクチンは23価です)

子宮頸癌ワクチン(ヒトパピローマウイルス・HPVワクチン)
  女性の子宮入口に発生する癌の原因の多くがヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が原因になっています。 HPVは性行為によって感染しますので、予防接種をして、感染してもすぐにHPVを追い出すように免疫を付けます。 20-30才代までの女性なら接種する意義がありますが、公費の補助は中・高生女児です。ただし、このHPVにも、タイプがあり、このワクチンはその中の16・18型に対するものです。 その他の型からの子宮頸癌をなくすことはできません。子宮頸癌は子どもを産む20才代から30才代に多いので、妊娠したら産科の先生は必ずチェックしますが、 20才代以上になったら産婦人科で子宮頸癌の検診も必ず受けましょう。




予防接種の標準的受け方 まとめ・結論 *乳児・小児編 *
1・・・産まれて2か月になったら
ロタ(1回目)・B型肝炎(1回目)・ヒブワクチン(1回目)
---計3種接種
2・・・3か月で
ロタ(2回目)・B型肝炎(2回目)・4種混合(1回目)・ヒブワクチン(2回目)・肺炎球菌ワクチン(1回目)
---計5種接種
3・・・1か月後に4か月健診といっしょに
ロタ(3回目)・4種混合(2回目)・ヒブワクチン(3回目)・肺炎球菌ワクチン(2回目)
---計4種接種
4・・・その1ヵ月後に
4種混合(3回目)・肺炎球菌ワクチン(3回目)
---計2種接種
5・・・10か月健診で
B型肝炎(3回目)
6・・・1歳になったら
MR(麻疹・風疹)(1回目)・水痘(みずぼうそう)(1回目)・おたふくかぜ(南国市は6歳までに)
---計3種接種
7・・・「4」から1年後に
4種混合・ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン(4回目)
---計3種接種
8・・・「6」から(6か月~)1年後に
水痘(2回目)
9・・・3歳過ぎた4~6月に
日本脳炎予防接種
10・・・年長=小学校入学前の年度に
MR(麻疹・風疹)2回目
11・・・小学校5~6年
2種混合
12・・・女児は中学1年生から
子宮頸癌ワクチン接種開始(計3回)


注1:ロタワクチンのみなら生後6週間後から接種可能。
注2:ロタワクチンは生後32週まで
注3:ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンは4歳まで。
注4:おたふくかぜワクチンは有料です。水痘ワクチンは3歳過ぎると有料。
注5:日本脳炎ワクチンは生後6か月から接種可能です。


  

*田村こどもクリニック*
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