1年生になる前に予防接種チェックをしましょう

 予防接種には受けておいたほうがいいもの、どちらでもいいもの、しなくていいものがあります。これらは予防しようとする病気の重大性、治療法の有無、病気にかかる頻度、 後遺症・合併症の種類と頻度、予防接種の有効率、 副反応の発生率と重症度、 予防接種が有料か無料か、自分の子の病気などを参考にして、最終的には個人の生き方や病気に対する考え方で、受けるか受けないか、 また、いつ受けるのか。などを決めていきます。

  以下に主な予防接種の簡単な説明を記しておきますので、予防接種をしているか否かを母子手帳で確かめてみてください。 母子手帳を持参していただければチェックし、必要な方には予防接種を受けるスケジュール等をご説明します。小学校1年生になるこの機会に、ぜひ母子手帳を見てみましょう。

 副次的な事ですが、母子手帳を一緒に見てお子さんが生まれた時のことを思い出して、お話をしてあげるのもいいものです。なお、予防接種を公費(無料)で受けられるのは7才6ヶ月までです。 それを過ぎますと自費(当院では4500円)になります。予防接種を受けるつもりが忘れてしまっているとか、受け損ねているかたがいましたら、早めに受けるようにしましょう。
記録(母子手帳)がないとか、はっきりしない方は役場に問い合わせることもできます。 外国では予防接種を規定どおりに受けていないと入国できない国もあります。国際交流が盛んになってきている昨今の現状から、子供の将来の可能性も考え、予防接種を受けるようにしてください。

三種混合(DPT=ジフテリア・百日咳・破傷風) 破傷風の予防接種の効果 は約10年しかないため、小学6年生で二混(DT=ジフテリア・破傷風)の追加接種をします。しかし、これは少なくともDPTを3回受けて、基礎免疫ができている者だけです。DPTを受けていないものには小学6年でのDTは意味がないのでしません。

麻疹(はしか) 子供のときにかかってもかなりしんどい病気ですが、大人になってからかかるとさらに重症になる病気です。予防接種は熱を出す副作用も時にありますが、病気になることに比べたら利益のある予防接種と言えます。大人でも予防接種はできますので、していない方はご相談下さい。

ポリオ(小児麻痺)  この病気は今の日本にはありません。ただ世界にはまだあり、国際的な交通・交流のさかんな現状ではポリオが日本に持ち込まれる可能性がないとは言えません。 この予防接種は口から飲みますし、もっとも安全なものですので、 受けておくことをおすすめします。 ただし、これは集団接種ですので福祉センター・役場などに問い合わせてください。

風疹 妊娠初期にかかると胎児に異常をおこすため、女児は入学前にぜひしておきましょう。子供の風疹は合併症もほとんどなく軽い病気ですが、大人になってからかかると少し重くなり入院することもあります。男児も無料で受けられるうちに受けておいたほうがいいでしょう。

BCG(結核)  ツ反(ツベルクリン反応)が陰性の時、 BCGをします。BCGは乳幼児の重症な結核の予防効果 はありますが、大人の結核に対する予防効果は証明されていません。小学1年でのBCGも廃止の方向で検討中です。さらに、BCGをしていなければ結核にかかっているか否かの診断がやりやすいという利点もあります。

おたふくかぜ(ムンプス) 難聴の後遺症がたまに起こりますので予防接種をしておいてもいいのですが、これは有料になります。
不顕性感染があるので大人は抗体価を調べてからにしています。

 

予防注射で泣かないために

 予防注射の時間は、小児科の外来は子供の泣き声で一杯です。しかしよく見ていると子供の泣くポイントは4ヶ所あります。

 1.小児科に入ってきた時。
 2.診察の時、看護婦、医師の顔を見て。
 3.注射の針をさした時。
 4.注射の液を押し入れた時。

 1.2.で泣く子は先入観の強い子ですが、賢い子とも言えます。(笑) 
2.で泣く子が一番多いようです。我慢強い子は3.よりも4.で泣きます。というのは予防注射の針は細く、刺した時はそんなに痛くはないのです。  注射の液が皮下を刺激する4.の時の方が痛いのです。ですから4.で泣くのは仕方がないのですが、 1~3で泣くのは家族の方の子供への接し方で大分防げます。
それはまず嘘を言わないことです。家を出るときから予防注射をしに行くこと、少し痛いけれど我慢できる範囲であること、そして何よりもそれで病気を予防できることを本人によく説明してあげてください。 これだけで泣く子が少なくなります。何もしないとか、痛くないと言えば、嘘をつかれた怒りと不安で泣きます。

検査のための採血
  血液は普通、ひじの内側の静脈から採血します。大人や動かない子は注射器に普通 の針をつけて採りますが、動く子は点滴用の翼状針にします。
このほうが少しぐらい動いても針先が血管から外れません。 小さい子の場合は、 手の甲の血管に針だけ刺して流れ出る血液をスピッツに受ける方法もあります。これは痛みが一番少ない方法ですが、採血量 を多く必要とする場合は時間が長くかかり、 流れ出る血液を上手に受けないとそこら辺りが血だらけになってしまいます。
どうしても採血できないときは鼠径部(ソケイブ=股の付け根のところ)から採ることもあります。

点滴
  病気では吐く(嘔吐)のが一番困ります。薬を出しても飲めないし、低血糖や脱水症状を起こすこともあります。 そんな時には点滴をして直接体内に補給をしてやります。 入院して注射をするときも点滴をしておれば点滴のチューブからするので、痛い思いを減らすことが出来ます。外来で点滴をするときは2~3時間はかかります。 小さい子供ほど点滴の速度をゆっくりしなくてはいけないので、 「点滴をしなければいけないかも」と思うときは、出来るだけ早い時間に病院へ行きましょう。
 点滴を刺す部位は子供の場合、手の甲が主ですが、あまり動かない子供であれば足にもします。 入れるのが少し難しいのですが、前腕(ひじから手首の間)に入れると例え手を動かしても大丈夫なので、点滴をしている間が楽です。 当院では出来るだけ前腕にしています。それ以外の場合は点滴の針が抜けないようにしっかりと固定します。

注射・点滴は"ちょっと"だけ痛い!?(採血の手順)
  採血が1回ですむように、針を刺す血管を選びます。 太っている子の場合は血管が見えにくいので、触った感触や血管があるはずの部位 にします。 身体が冷えていると血管が縮んでいるので、 こすったり熱い(やけどしない程度の)おしぼりで暖めたりしておきます。針を刺す前にアルコールをしみ込ませた脱脂綿で部位 を消毒します。 針を刺した時痛いのはアルコールが傷口にしみて痛みを感じさせる場合もあるので、 アルコールが乾いてから刺すと痛みも少ないのですが、待っていると血管が冷えて縮んでしまいます。 針を刺すときは思い切ってブスッと刺します。痛みを感じる神経は皮膚の表面近くに多いので、そこを針先が素早く通 ったほうが痛みが短いからです。
 針を刺すときにはしっかり固定します。家族の方には足と針を刺さないほうの手を押さえてもらい、看護婦が針を刺すほうの手を押さえます。1回で入るか否かはその固定で決まります。後の半分が、針を刺す看護婦、医者の"腕"です。(笑)

注射は懲罰ではありません。 「言うことを聞かないと注射をしてもらうよ」とか言わないようにしてください。 「病気を早く治すためにちょっと痛いけど我慢しようね」と言ってあげてください。身体が弱っているときこそ優しさが必要です。


お父さん、お母さんへ

はしか(麻疹)・おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は済んでいますか?

 "はしか"は今高知市だけで1週間に10人以上発生しています。子供がかかっても非常にぐったりして、半分以上は点滴・入院になります。おとながかかると必ず入院、死ぬ目にあい、まれですが、本当に死ぬこともあります。予防注射は年令に関係なくできますので、かかっていない方、予防注射をしていない方はすぐに予防注射をしましょう。"おたふくかぜ'もおとながかかると合併症も多く、かなりしんどくなります。子供からもらって苦しむ方が必ず出ますので、調べて確認しておきましょう。かかったかどうかわからない方は血液検査で、抵抗力があるかどうか調べることができますので、受付に言って下さい。予防注射費用は4500円です。