国立高知病院の現状
2004年3月23日(火)
国立高知病院 小児科 高橋
1ヶ月健診時における、完全母乳栄養児の割合は下記の通りである。
|
母乳のみ |
混合栄養 |
人工のみ |
合計 |
不明 |
母乳>人工 |
母乳<人工 |
人数 |
% |
人数 |
% |
人数 |
% |
人数 |
% |
人数 |
人数 |
2002年 |
166 |
34.3% |
120 |
24.8% |
106 |
21.9% |
92 |
19.0% |
484 |
230 |
2003年 |
264 |
37.7% |
147 |
21.0% |
175 |
25.0% |
115 |
16.4% |
701 |
54 |
2004年 |
62 |
36.5% |
49 |
28.8% |
40 |
23.5% |
19 |
11.2% |
170 |
0 |
国立病院の成育医療分野の目標として1ヶ月健診時の完全母乳栄養率が70%となっている。現状は非常に厳しい状況であることを示している。
【国立高知病院の分娩状況】
- 2003年院内出生数:897名
- 帝王切開率:201/883=22.8%(2003年分娩数:883)
- 20歳未満の若年分娩:20名
- 40歳以上の高齢分娩:16名
- 初回出産数: 474名
- 2回目出産数: 304名
- 3回目以上出産数: 119名
- 低出生体重児の分娩状況
|
2001年 |
2002年 |
2003年 |
<1,000g |
4名 |
5名 |
1名 |
1,000≦ <1,500g |
4名 |
6名 |
6名 |
1,500≦ <2,000g |
16名 |
12名 |
14名 |
2,000≦ <2,500g |
56名 |
73名 |
67名 |
【国立高知病院の特徴】
- 新生児室が存在する。(母児分離が容易に行える。)
- 新生児室の看護の管理は、参加の看護とNICU・未熟児室の看護の共同管理である。(継続的管理が出来ていない。)
- 母体の休養を優先する。出生直後より母児同室は行っていない。
- 母親が母児同室に出ても、”眠りたいので”、”疲れた”という理由で直ぐ新生児室に戻してくる。また、戻してくることに抵抗が無い様な病棟の雰囲気にある.
- 母親が、自分の都合で新生児を置いたまま長時間不在になることがある。(例えば喫煙のため)
- 参加病棟の夜勤助産師・看護師は2名体制である。
- 母児同室にしても産科スタッフの巡回が出来たいないため、適切な母乳確率のための支援が出来ていない。
- 分娩制限をしていない。(産科病床は、開院当初の20床から25床に増床している。)
- 「母乳育児を成功させるための10ヶ条」(ユニセフ/WHO)は病棟のどこにも掲示していない。
- 哺乳前後で体重を毎回測定し、哺乳量をチェックしている。また、毎日の体重減少率を計算し、減少率が多いと哺乳量不足として、人工ミルクを飲ませる傾向にある。(例、”ミルク許可を取ってあります。”という会話を聞く。)
- 乳業メーカーの栄養士が、産科病棟・乳児健診時の栄養指導を行っている。
- 乳業メーカーのサンプルや、メーカーの名前入りのパンフレットなどが病棟にある。
- 1ヶ月健診時、看護師による計測と小児科医師による身体の診察と短時間の会話程度である。1ヶ月間の体重増加程度を見て、栄養状況の評価を行っている。但し、健診担当医師は3人であるため、必ずしも同一の対応とは限らない。看護師による相談は無い。じょさんしによる母乳相談・指導も無い。(産科の1ヶ月健診でも、時間をかけて母乳栄養の指導は無い。)
- 乳児健診外来は1週に1回(水曜日の午後)である。1ヶ月以外の健診も行っているため30~40人の健診になる。平均すると1人に10分はかけられない。
- 1ヶ月健診時の集団指導は全く無い。
【悩み】
1ヶ月健診時の母乳確立を目指すのであれば、2週間後に1度体重増加チェックし、母乳栄養のみで十分である事を証明する事が、母乳育児を行う母親の自信につながる。何故ならば、母乳栄養主体の混合栄養の半分以上は母乳栄養のみで十分なケースと考えられるからである。しかし、母乳主体の混合栄養の部分が完全母乳になったとしても、70%に達しない。この現実は、出生後の努力に加え出産前よりの指導が必要であり、小児科医の努力ではどうにもならない。

*田村こどもクリニック*
http://www.inforyoma.or.jp/tamkocli/