クリニックだより NO.54 

2003/06UP

おしゃぶり はやめて欲しいのですが・・・

 高知新聞におばあちゃんからのおしゃぶりについての投書がありました。息子夫婦に孫が生まれて喜んでいたら、息子がおしゃぶりを買ってきてくわえさせる、おばあちゃんとしてはおしゃぶりをくわえさせたくないが、という内容でした。孫はまだ2ヵ月、母乳で育てているということでした。


☆”おしゃぶり”は必要か?

 あかちゃんを育てる時、"おしゃぶり"必要な物ではありません。
"おしゃぶり"が使われだしたのはここ数十年前からで、当然それ以前は"おしゃぶり"などなくてもあかちゃんは健康に育っていました。


☆”おしゃぶり”は害になる!!

.母乳育児にとって
 赤ちゃんは口に入るもの、その形、におい、堅さ、などをお母さんの乳首と認識します。
母乳哺育だと赤ちゃんの口にはお母さんの本物の乳首が1日何回も入ってきているので、それを母親の乳首と認識して、吸っています。
ところが人工乳首(おしゃぶり)が入るとそれを本物の乳首と間違い、母親の乳首を吸わなくなることがあります。
吸い方自体もお母さんの乳首と人工乳首では違いますので、おしゃぶりになれるとお母さんの乳首の吸い方が下手になります。

 それに加えて、哺乳ビンでミルクを与えると軽く吸ってどんどんミルクが入ってくるので、一生懸命吸わなければならないお母さんの乳首はますます吸わなくなります。
吸われない乳房は、お母さんが乳腺炎になるのを防ぐため、母体の反応として母乳分泌を止めるように働き、母乳は1-2ヵ月で出なくなってしまいます。

 WHOが提唱し、日本の旧厚生省・医師会も後援している"母乳育児を成功させるための10カ条"にも母乳で育てている赤ちゃんにゴムの乳首やおしゃぶりを与えないようにしましょう"という項目があります。

2.歯にとって
 歯科のほうからは、歯ならびや歯の向きに良くないと言われています。
これは"指しゃぶり"も同じことですが、"指しゃぶり"は自分の指ですからある程度はしかたがないのですが、"おしゃぶり"は親がわざわざ買って口に入れるのですから意味が違ってきます。

3.母子関係にとって
 赤ちゃんが泣くと普通はまずだっこして、お乳を飲ましてみて、おしめを見て、ほほえみかけて、つっついてみて、声をかけて、などなどで、母親はなんで泣いているのか、なんとかニコニコして欲しいとあやして努力します。
そうしているとあかちゃんがなんで泣いているのか、どうしたら機嫌をなおしてくれるのかがわかってきます。
 "おしゃぶり"を使って泣かないようにしていると、このような親子のコミュニケーションをとることが下手になり、子供が泣いて訴えていることがわからず、無視することになります。


☆ ”おしゃぶり”はいいことがあるか?

1."おしゃぶり"は顎の発達に良い?
 顎はかむことで発達し、かむことは歯並びや脳への刺激にもなると言われています。
ところが"おしゃぶり"は"かむ"のではなく、"吸う"運動が主体ですので、あごの発達にはならないと言われています。

2."おしゃぶり"は鼻呼吸をうながす?
 鼻で呼吸する方が、口呼吸に比べて、鼻の粘膜で空気が浄化され湿度も加わるので良いと言われています。"おしゃぶり"をくわえさすと口で息ができず、自然に鼻呼吸になるので"おしゃぶり"が良い、という話があります。
しかし泣く時以外は、赤ちゃんはもともと鼻呼吸ですし、もし鼻がつまっていて口で息をしているのなら"おしゃぶり"は口を塞いで息ができにくくなってしまいむしろ危険です。


☆結論
おしゃぶりは赤ちゃんに"猿ぐつわ"をかましているようで、見かけ上もいいものではないのですが、特に母乳で育てている赤ちゃんには絶対くわえさせないようにして下さい。
 "おしゃぶりの効用"と言われているのは、赤ちゃんが何故泣くのかわからない未熟な親の不安につけこんで、なんとか"おしゃぶり"を売る理由をつけているだけのことです。
 赤ちゃんが泣いたら何故泣いているのかを考えながら、ニコニコしてあやしてあげて下さい。だんだん泣いている原因がわかるようになり、"おしゃぶり"を使わなくても不自由しなくなりますから。

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