NO.81 2007・11.26    
・・・母乳育児ができないのは誰が悪いのか?


昔
 乳児健診をしていると必要がないのに人工ミルクを足している母親が多いのに気が付いた。人工ミルクを足すから母乳が飲めない、飲まさないから乳腺が発達しない、当然母乳は1-2ヵ月で止まってしまう。子供は肥満。母親は”私の母乳は出なかった”とあきらめる、”母乳、母乳と言うな”と怒る。
 お母さんは豊満な乳房、栄養状態の良い体格。聞くと搾母は100ccも出たと言う。私は、”母乳を止めたのはあんたや!!”と叫ぶ。

次に
 母乳育児成功のための10カ条を知る、山内の3.5カ条もあった。勤務医だったから、新生児に人工ミルクを飲まさず、母乳を飲ますように指示。ところが助産婦が指示に抵抗する。特に年配の助産婦が”自分の子はずっとミルクだったけど病気もせず元気だった、ミルクをやってどうして悪いのか?”と言う。産科医からは”お産が減っているから、人工ミルクでいきたい母親が来なくなったら困るから、母乳にすると言わないでくれ”と怒られる。入院中の調乳指導をやめてと頼むがもちろんダメ。そして忘年会の二次会はミルク会社の協賛。結論、産科が悪い!!

でも開業して
 どんなに人工ミルクを足す産科でも、助産師がいない産科でも、調乳指導で母乳の止まる方法を教えられても、30-40%の母親は母乳のみで育てているのに気付いた。母乳哺育の方法なんて誰も教えてくれず、テレビでも映画でも泣く子には哺乳ビンで人工ミルク。乳首からは血が出るし、乳房は乳腺炎で痛くなるし、夜は何回も泣かれるし。それでも約三分の一の母親は母乳のみで育てているなんて、これは逆だ、母乳育児を守っているのは母親だったのだと、ようやく気が付いた。

産科医も大変
 母親と言ってもピンからキリまでいる。望む妊娠をして、良いお産をして、愛情を持って育てる母親がいる。一方で、仕方なく産んで、自分の子をかわいいと思えず、育てる気も技術もない母親もいる。と考えたら産科の医者も大変だ。生まれて1週間で母子を退院させて赤ちゃんは大丈夫なのか、人工ミルクででも体重を増やして退院させたら、人工ミルクなら母親以外の家族が世話もできるし、と考えてもしかたない、か。

誰が母親を援助するのか
 妊娠中と出産後、産科医・助産師が母乳を含めて母親の世話をする。よくすれば結果として、出産退院時90%以上の母乳率になる。だが母乳育児はこれで終了ではなく、始まったところだ。少なくても後1年間、WHO推奨だと2年間の母乳育児が続くのである。母乳のトラブルはなんぼでも起こる。乳房の専門家って医者では外科って、知ってました? でも授乳中の母親が母乳育児のトラブルで外科の医者にかかるはずはないよね。母乳の専門家が助産師とは知らないし、知ってても子供を産んだ母親が一番行く病院・科は小児科です。相談するのは友達=母親、うまくいけば助産師です。

だから
 子供を産んだ母親と出会う人はみんな母乳育児のことを知っておきましょう。生まれて・産んで1-2年間、母と子の蜜月を支えてあげましょうよ。その支援の中心を母乳育児において、自分の経験からだけでなく、科学的に、一般的に、国際的に、具体的にどう対処したらいいのかを勉強しましょう。困った時相談できる人をつくりましょう。母親を紹介する連絡網をつくりましょう。
 その為には当院のいろんなイベント・保護者講座・高知母乳の会定例会等々においで下さい。ひとつずつ賢くなっていきましょう。


田村こどもクリニックイベント情報
・ 1/17(木)おいしい母乳を飲ませましょう!
 講師 貞弘 典子さん(貞弘助産所)
・ 1/28(月)産後の母親の栄養・児の補完食
 担当 山崎(栄養士)
※母乳教室は毎月1回、小児科医と助産師が担当して行っています。

      

*田村こどもクリニック*
http://www.inforyoma.or.jp/tamkocli/